【難易度と解説】ベートーヴェン 3大ピアノソナタ(悲愴 / 月光 / 熱情)

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン

「バッハの平均律が旧約聖書なら、ベートーベンのピアノソナタは新約聖書だ」

そう評されたほどに、今もなお多くのピアニストやピアノ学習者にとってバイブル的存在のベートーベンのピアノソナタ。

私もこの間の発表会で、あの有名なピアノソナタ第8番「悲愴」第二楽章を演奏しました。
ドラマや映画の印象的なシーンでも良く使われている曲ですよね。

例えば、、

アパートの隣人であるのだめに拾われた、泥酔状態の千秋。
目覚めるとそこは足の踏み場のないゴミ部屋だった。
ただベートーヴェンのソナタが美しく響いていた。

のだめカンタービレ

仕事中にシャーロットの演奏を聴いたホフマイスターは「甘美だ」とため息をもらしました。

映画「暮れ逢い」

といった具合に。

申し遅れました、ピアノ愛好歴30年のこまるほまるです。

私は現在はピアノソナタ第14番「月光」第三楽章を練習中です。
疾走感に満ちた、緊張の途切れる所のない曲ですがとにかくカッコいいんですよねー。

解説のところに辻井伸行さんの演奏を置いていますので、よければ一度聞いてみてください♪


ベートーヴェンは上記以外にもピアノソナタを多く書いていて、その数全部で32曲になります。
中でも超有名なのが今から取り上げる3曲、タイトルで示すと「悲愴」「月光」「熱情」で、この3曲がベートーヴェン の3大ピアノソナタと呼ばれています。

そして3曲とも、第一楽章、第二楽章、第三楽章と、3部形式に分かれていて、それぞれが全く違う曲調と難易度なのです。

そこで楽章ごとの難易度を私なりにまとめてみました。

ベートーヴェンの3大ピアノソナタ
各楽章ごとの難易度

曲名楽章難易度(Lv.1〜6)
第8番「悲愴」 Op.13第一楽章Lv.5 ★★★★★
第二楽章Lv.2 ★★
第三楽章Lv.3 ★★★
第14番「月光」 Op.27-2第一楽章Lv.1 ★
第二楽章Lv.2 ★★
第三楽章Lv.4 ★★★★
第23番「熱情」 Op.57第一楽章Lv.5 ★★★★★
第二楽章Lv.4 ★★★★
第三楽章Lv.6 ★★★★★★

なぜこの難易度になったのか、結局どこが難しいのかを以下に詳しく書いていきますね。

以降、曲名はタイトルを用い、ソナタ番号とOp.の表記は省略します。

結局どこがどう難しいの?
難所の解説と練習のポイント

以下に各楽章の弾きにくいところ(難所)の解説と練習のポイントなどを記していきます。私の主観でセレクトしたお手本動画も参考にしてみてください。

「悲愴」第一楽章 Lv.5 ★★★★★

12小節目以降の左のトレモロ

どうしても力が入ってしまって、スタミナが続かない人続出の部分です。

うまく弾くポイントとしては指を動かしすぎないことです。というか指は鍵盤から離れないで良いです。
あと手首を回転させているとだんだん疲れてくるので、1指と5指を交互に少しだけ下ろすという運動をしながら、左手全体を水平移動させるイメージを持ちましょう。

そもそもオクターブの状態でいることで疲れてしまうなら、訓練が必要です。
ハノンのオクターブ奏法の基本をさらうなどして、筋肉を柔軟にしていきましょう。
その際、無理は禁物で疲れたら休ませるようにしないと手を痛めてしまいます。一朝一夕での習得は無理ですので焦らず気長に体に覚えこませましょうね。

94~98小節目

左右の手が離れていく部分は音がバラバラしているように感じてミスが起こりやすく弾きにくいです。

ここは和音練習が良さそうです。
8分音符4つを一つの和音にして(1小節あたり2つの和音)和声の変化を感じつつ、自分にあった指づかいを探りましょう。
それをゆっくりと反復させることで体に覚えこませます。

「悲愴」第二楽章 Lv.2 ★★

こちらについては詳しい解説を別記事にまとめました。
以下をご覧ください。

「悲愴」第三楽章 Lv.3 ★★★

哀愁を湛えながらも滞りなくサッと弾ききるのがポイントです。
しかし例外もあります。

26、135小節目のdolce

ここををサッと適当に弾いてしまってはダメです。作者の意図に思いを馳せて、最後のスタッカート和音までキレイに繋げてまとまりを感じさせましょう。

99小節からの左手スタッカート

どうしてもテンポが遅れがちになりますので、指は鍵盤から離しすぎずに硬質な音を出すイメージでスタッカートを表現しましょう。

「悲愴」お手本動画

ダイナミクスと緩急具合が胸を打つ、瀬田 敦子さんの演奏です。

「月光」第一楽章 Lv.1 ★

一般的に「月光」といえばこの第一楽章です。スローテンポで淡々とした曲調で特に難所と言える部分はないのですが、強いていえば以下でしょうか。

メロディーラインを浮き上がらせることが難しい

5小節目からは右の5(もしくは4)の指でメロディーを歌います。
しかしその他の右の指は常に冷静に3連符を弾き続けます。

この曲は終始この弾き方が続きますので、メロディーラインをキレイに浮き上がらせるために、完全に各指が独立していることが望ましいです。

5や4の指が思い通りに動かない場合は、ハノンなどの訓練系の教本を練習前のルーチンに組み込むことをおすすめします。

「月光」第二楽章 Lv.2 ★★

スラーやタイによるシンコペーションのリズム

スラーやタイによるシンコペーションのリズムをうまく掴んで拍を見失わないように弾くのが難しいところでしょうか。
右はレガートで、左がスタッカートという弾き分けも反復練習が必要ですね。

「月光」第三楽章 Lv.4 ★★★★

第三楽章については詳しい解説記事を書きましたので、こちらを参考にしてください。

「月光」お手本動画

辻井伸行さんの演奏です。透明感抜群な音を堪能ください。ブラボー!

「熱情」第一楽章 Lv.5 ★★★★★

14小節目のカデンツァ

聴衆を惹きつけられるかどうかは、ここのカデンツァの美しさにかかっていますので、ゆっくりと反復練習で体に染み込ませましょう。

28〜29小節目、左で同音連打しつつ、右と左で3度のメロディの受け渡し

軽く機敏に、かつ、どの音も弱音ながらハッキリと弾いてメロディを繋げます。
その際、3度の音の長さはきっちり守りましょう。

81小節目、左の変則的アルペジオ

右のアルペジオに比べて速度が落ちやすいポイントなのでしっかり弾き込んで準備しておきましょう。
左で弾いていると気づかれないぐらい、流れるような自然さが理想ですね。

130小節目以降のff(フォルティッシモ)は落ち着いて確実に

ここは興奮ポイント(笑)で案外左手を外しやすいので注意です。
ここを外すとミスタッチとしてかなり目立ちますので落ち着いてちゃんと息しましょう。

138小節目のトリルをどう弾くか

楽譜には指5と4の指示があるが、弾きやすい指にしてペダルで馴染ませるのも手です。

最後のコーダでは我を見失わないように!

興奮のあまりPiu Allegroのダダダダーンを速く弾きすぎるとその後の収拾がつかなくなります。なのでその前にちゃんと呼吸して一度落ち着きましょう。
後の和音進行部がどのくらいの速さで弾けるか逆算してからテンポを決めた上でPiu Allegroに入りましょう。

「熱情」第二楽章 Lv.4 ★★★★

ハイレベルな二つの楽章に挟まれた緩徐楽章(息抜き的楽章)です。
が、コラール風の響きを心地よく響かせるためには、

48小節目からの左アルペジオでもたつかないように

48小節目以降はメロディーラインが右左と交互にやってきますが、それらを違和感なく響かせるためには左のアルペジオの部分でもたつかないように。
ここは祈りのメロディー。神秘的に歌いましょう。

「熱情」第三楽章 Lv.6 ★★★★★★

高速パッセージが最初からずっと続いて、コーダはそこからさらに加速するのですから、とにかく耐久力が無いと持ちません

135〜138小節 右手上部にメロディ出現

右の内声部が弾きづらくなりますので、メロディと内声部を分けて滑らかに弾けるようにします。

220小節目からの左手での主題提示

ここも速度が落ちやすいポイントです。
右と同じくらいの速さで弾けるまでリズム練習などで慣らしましょう。

最後のコーダでさらに加速し、和音の嵐

ここまでに体力を十分温存しておかないとラストまではキツイです。
技術はもちろんですが体力勝負なところがありますので、ここまできたら完全燃焼する勢いで聴かせましょう。

「熱情」お手本動画

アシュケナージの若い頃の演奏です。静と動のコントラストが素晴らしすぎる!高音なんてキラッキラです!!

まとめ

以上、ベートーヴェンの3大ピアノソナタの難所を紐解いてみました。

難易度は低めから上級者向けまで、様々だということがお分かりになったかと思います。
ピアノ愛好家の方ならぜひ自分にあった難易度の曲に取り組んでみてください。
ベートーヴェンの天才っぷりに感動することと思います。これ、聴くと弾くとでは感じ方が大きく異なるところです。

ピアノ曲の新約聖書と言われたベートーヴェン のピアノソナタ。
これを機に興味を持っていただけると嬉しいです。

それではまた。こまるほまるでした。