私は若い頃、あまりショパンの曲に親しんではいなかったのですが、
珍しく「これ弾きたい!」と強く思ったのが、これから紹介するエチュード作品25の最後の曲、12番「大洋」でした。
両手のアルペジオが荒れた海の波を表現しているようで、
より長いアルペジオの時の高音部なんて、まさに大波のきらめきを思わせる荒々しくもかっこいい曲なのです。
ロシア絵画に「第九の波濤」という傑作がありますが、まさにそんなイメージの曲です。
こんにちは、こまるほまるです。
今回はそんな「大洋」を含めたエチュード作品25の12曲にスポットをあてていきます。
他にも、「エオリアンハープ」「蝶々」「木枯らし」など有名な曲が含まれていますよ。
「別れの曲」「黒鍵」「革命」などが含まれているエチュード作品10は以下の記事で紹介していますので、お時間あればぜひ合わせてご覧ください。
以下、私なりに感じた難易度とともに、各曲が持つ特徴、難所との向き合い方などを記します。
結局どんなところが難しいの?
ショパン エチュード作品25 各曲を難易度とともに解説!
エチュード作品25-1 難易度Lv.3 ★★★「エオリアンハープ」
両手でアルペジオを弾きながらメロディーと伴奏を引き分ける曲
この曲はなんというか、弾いてて癒されますね。
練習中、小さな音符のツブツブを無心で追いかけていても、時折あらわれる旋律の美しさにハッとします。
演奏は風のように軽いタッチで、右手小指で奏でるメロディーを良く聴きながら弾きましょう。
広いアルペジオ部になった時に、テンポやタッチの揺れが出やすいです。
焦らずゆっくり練習して確実に音符を拾えるようになってから、速度を上げていってください。
ちなみにエオリアンハープとは、自然に吹く風の力で音が出る弦楽器だそうです。(どんな楽器か全く想像つかない。。)
エチュード作品25-2 難易度Lv.2 ★★
右手が常に3連符で動き続けるピアニッシモな曲
右手は2拍、左手は3拍を意識したアクセントの位置の違いにより生じる浮揚感がショパンらしい曲です。
右手は高速で動き回るのですが音域の範囲が狭く、そういう意味では逆に弾きにくいかもしれません。
molto legatoと指示があるように、高速で弱音なのですが、極めて滑らかに弾ききるのが理想です。
エチュード作品25-3 難易度Lv.3 ★★★
右手のトリルの完全習得と正確な跳躍を求められる曲
9小節目からの右手内声部のトリルが難所です。
速度を落とさずに譜面通りの音符を正確に弾かなければなりません。
ですがそのトリル部分さえクリア出来れば易しい曲です。
曲の展開も面白いですし、つい早く弾いてしまいますが(そもそもあまり遅いテンポだとこの曲の良さが半減してしまうので)、
練習ではゆっくり確実に音を拾っていきましょう。
英語圏では通称「車輪(Cartwheel)」だそうです。
車輪のようにぐるぐるまわっている感じは確かにありますね〜。
エチュード作品25-4 難易度Lv.3 ★★★
スタッカートと左手の跳躍のための練習曲
終始和音のスタッカートが続き(一部レガートあり)、歯切れ良い演奏が求められます。
良く訓練された方にはなんてことない曲かもしれませんが、中級レベルあたりだと苦手とする方も多いため、演奏者としてのレベルが如実に現れる曲です。
左手の跳躍で音を外しやすい場合は、超スロー練習で最短ルートを模索してください。
また、右手が裏拍になるのでテンポを早くしてもその意識がなくならないように弾きましょう。
エチュード作品25-5 難易度Lv.4 ★★★★
美しい音の響きへの追求と正確なリズム感習得のための曲
A-B-A’形式の3部構成になっていて、曲としてとても芸術性の高い曲です。
いやー、ショパンってほんまに天才。。
冒頭のscherzandoは「戯れるように、軽快に」との指示。
付点のリズムで和音と単音の長さの違いをハッキリと示しましょう。
曲想が変わる中間部では、右手で繊細な分散和音をきらめかせながら、左手はたっぷりと歌います。
右手は決してうるさくならないように。
フレーズの最後の音まできっちりと弾く必要はなく、消え入るようなグラデーションのイメージで弾きましょう。
あくまでも右手は演出なので、思いの丈は左手にこめましょう。
エチュード作品25-6 難易度Lv.6 ★★★★★★
エチュード最高難易度!
右手3度和音のトリル、3度和音の半音階の練習曲
みんな初めは弾けない「3度」、貴方はどう乗り越えますか?
この難曲への対峙ですが、ゆっっくりとしたテンポでとにかく正確に弾けるまで速度をあげてはいけません。
良く訓練された指でないと痛めてしまう恐れもあります。
とにかく焦らず時間をかけて慣れるまで地道に取り組む姿勢が必要です。
例えば私はこの曲を弾くために、ハノンの3度の部分を地道に練習しています。
3度の動きは普通ではないピアノ演奏特有の動きなので、身体に染み付くまで慣らしていくことになると思います。
そんな皆が恐れる3度の連続の裏で、左手は低音のドラマティックなメロディーを奏でます。
序盤は控えめですが、曲が進むにつれ哀愁を含んだ音楽が姿を現し、
これもまた練習曲という枠を大きく超えた芸術作品なのだと再認識します。
エチュード作品25-7 難易度Lv.3 ★★★
複数のメロディーと伴奏を両手で分担しながら歌う曲
左手と右手が絶妙な掛け合いを繰り広げます。
主に右手内声部が担う伴奏により、スローテンポのこの曲に流れを作っています。伴奏とはいえ、表情豊かに音量のダイナミクスもたっぷり付けて弾くと雰囲気が出ます。
中間部、左手の燃え上がるようなカデンツァが難所と言えます。
フレーズを一つの大きな山のように途切れないように弾きましょう。
通称「恋の二重奏」と呼ばれているようです。
なんか昭和歌謡のようなタイトルですね。。
エチュード作品25-8 難易度Lv.5 ★★★★★
右手6度和音のトリル、半音階の練習曲
右手は常に6度の連続で難曲なのですが、ゆっくりと指使いを確認していくと決して無理のない移動であることが判ります。
ショパンのエチュードは総じて簡単な曲ではないですが、この曲は手の大きい方に限ってはそこまで難易度は高くないと思われます。
というより、決して弾きにくくはない、しっかりと運指が考えられている(ショパンによって)曲なのです。
ただ、黒鍵から白鍵に移動する際に音の変化に違和感が出ないように注意しましょう。
英語圏では作品25の6番が「3度」だったのに対しこの曲は「6度」と呼ばれ親しまれています。
エチュード作品25-9 難易度Lv.3 ★★★「蝶々」
完全な脱力による軽快さを求められる曲
1分程で終わる短い曲なのですが、なかなか簡単には弾けません。
ゆっくりと練習するのもそれなりに難しいです。
ただゆっくりと練習する際にも、この曲がもつ軽快な性格を意識して弾きましょう。
要するにダラダラと練習していてはこの曲の表現が身につかないということです。
特に右手の3度からオクターブに変化する流れが常にありますので、そこを軽やかに弾くためには相当な練習を重ねる必要があります。
聴く側には軽く弾いてるなー、と思われますが、楽譜を見てギョッとされる類の曲ですよね。
エチュード作品25-10 難易度Lv.4 ★★★★
両手オクターブのための練習曲
聴いている側にとってはうるさいらしいです。この曲。
冒頭からオクターブでクレッシェンドですからね。。
ただ中間部は途端に美しい旋律を奏でます。
この曲の難所はもちろんオクターブ部分、しかもそこにはペダルの指示がいっさいありません(ノンペダルで弾けという指示でしょうね)。
手をグッと開いた状態でポジションを移動しながらレガートで弾ききる柔軟性が必要な曲です。
エチュード作品25-11 難易度Lv.5 ★★★★★「木枯らし」
左手のメロディーを軸に右手の6連符を華麗に鳴らす曲
有名な「木枯らしのエチュード」、難所は何と言っても右手の高速で動く分散和音や半音階での下降、そしてそれが左手にも出現するという。。
楽譜を真っ黒にする無数の16分音符に挫けそうになりますが、
一度冷静になって楽譜を分析してみてください。
弾きにくそうに見える部分も一つのパターンを覚えてしまえば、その派生の繰り返しなのだということに気づくはずです。
そしてゆっくりと指の形を覚えこませながら練習しましょう。
ハードルは思ったほど高い位置にはありません。
また、この曲も16分音符の動きが多い分フレーズ単位が大きくなっていますので、演奏時はフレーズ途中で変に途切れないよう、深い呼吸をもって臨みましょう。
エチュード作品25-12 難易度Lv.3 ★★★「大洋」
両手アルペジオと正確なポジションの移動が求められる曲
アルペジオの連続だけで、こんなにも美しい音楽を形作ることができるとは。
ショパンの天才ぶり、またしても再確認せざるを得ません。
譜面だけ見れば完全なる両手アルペジオの練習曲なのですが。
要所のアクセントの指示や絶妙な和声の進行により、この曲はとてもドラマティックな仕上がりになっているのです。
技術的には決して難しくはなく、丁寧なアルペジオ練習と的確なポジション移動をゆっくりと行うことで、中級レベルの方でも十分演奏できる曲です。
両手のアルペジオは荒れた海の並みの数々、その中に美しい旋律が見え隠れし波は最高潮に達します。
個人的に大好きな曲でもあります。
お手本動画
これらの作品25を納めた音源、たくさんあるのですが今回は、、
永遠の名盤!ショパンコンクール覇者 ポリーニ(若いころ)の演奏です。
まさに「非の打ち所がない」演奏に驚愕です!!
まとめ
ショパンの傑作、エチュード作品25の12曲の解説はいかがでしたか。
作品10よりもさらに音楽性に磨きがかかった作品25。
是非ともその世界に身を委ね、あなたのレパートリーに加えてみてください。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
こまるほまるでした。