【解説】ベートーベン ピアノソナタ 月光について

ベートーヴェンが30歳(1801年)の時に作曲した「ピアノソナタ月光」。
正式名称は、ピアノソナタ第14番嬰ハ短調 作品27-2『幻想曲風ソナタ』
実は全然「月光」じゃないんです!!

こんにちは!ピアノを愛好し続け気づけば30年経っていたこまるほまるです。

今回は偉大なるベートーベンが作曲された「ピアノソナタ 月光」について掘り下げていきたいと思います。

一般に「ベートーベンの月光」といえば、この曲の第一楽章のことですね。

静かで神秘的な第一楽章、可憐で可愛らしい刹那的な第二楽章、そして情熱的で激しめの第三楽章。

と、全部で三楽章ありますが、
初めの第一楽章の曲想がまるで「湖上に揺らめく月光」と思わせたということで「月光」という通称が定着したようです。

【解説】ベートーベン ピアノソナタ 月光について

「月光」というタイトルはベートーベン本人がつけていない

ベートーベンが発表時につけていたタイトルは「幻想曲風ソナタ」。
なのですが当時のカリスマ音楽評論家であり詩人でもあったレルシュタープ氏は、第一楽章を聴いてこう言いました。

まるでルツェルン湖の月光の波に揺らぐ小舟のようだ。。

ええ、なんともこの曲の世界観にぴったりなコメントです。

確かに、淡々と連続する三連符や分散和音は水面イメージさせますし、嬰ハ短調の和声進行は薄りのしっとりとした月夜を思わせます。

上記の発言が広まり、作品自体が「Moonlight(月光)」と呼ばれるようになりました。

過去の常識をぶっこわしている

曲の構成においては当時のピアノソナタの形式をガン無視しています。
「ルールはオレだ」的なベートーベンの勝気さが大いに反映されていますね。

ベートーベン自身がつけた「幻想曲風ソナタ」というタイトルからも、「ソナタ形式に縛られずに自由に作ってみた」という意思が読み取れます。
特に当時は第一楽章がソナタ形式ではないということが非常に珍しかったようです。

ベートーベンは晩年はほとんど耳が聞こえなかったようですが、難聴の兆しが出来きたのがこの時期です。
作曲家としては致命的といえる耳の病気だったため、周囲に感づかれることを恐れ思い悩み、遺書まで書いています。

死の覚悟を持って常識を打ち破ったベートーベンの挑戦だったのです。

情熱的な恋の曲でもある

さらにこの曲は発表当時に付き合っていた、伯爵令嬢のジュリエッタに贈られています。

ベートーベンが友人に宛てた手紙に彼女への想いを以下のように綴っています。

私の人生はいま一度わずかに喜ばしいものとなり、私はまた外に赴いて人々の中に居ます。
この2年の間、私の暮らしがいかに侘しく、悲しいものであったか信じがたいことでしょう。この変化は可愛く、魅力的な少女によってもたらされました。彼女は私を愛し、私も彼女を愛しています。2年ぶりに幾ばくかの至福の瞬間を謳歌しています。
そして生まれて初めて結婚すれば幸せになれると感じているのです。
しかし不幸にも彼女は私とは身分が違い、そして今は、今は結婚することなどできやしないのです。

なんとまあ。
これをふまえてこの曲のイメージを考えてみると。

静かで神秘的な第一楽章

だんだんと自分の聴力が衰えていく不安感の中、彼女によりどころを求めるも育ってきた環境が違うからすれ違いは否めません。
惹かれあっているにもかかわらず、想いを伝えられないもどかしさや全てをさらけ出せないミステリアスな恋愛初期のイメージでしょうか。

可憐で可愛らしい刹那的な第二楽章

束の間の現実逃避というか、二人だけのお花畑的なイメージです。
恋愛において最も楽しい時期です。本当にあっという間に終わってしまいますが。。

情熱的で激しめの第三楽章

いやあ、これはもう、そのアレですw
恋愛のドロドロした部分や感情を全てさらけ出してぶつかったり求めあったりしているイメージです。

実際に、この曲を贈った直後に彼女は別の爵位を持った作曲家と婚約し、結婚しています。
まあ、いろいろあったんでしょうね。

おすすめの演奏動画

アシュケナージがロンドンの教会で弾いています。
一音一音が身に染み渡り、否が応でも魂を揺さぶられる演奏です。泣ける..!

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練習方法の解説記事も書いてます!

最後に

このように「ピアノソナタ 月光」という曲は、想像をかきたてる背景があり実にドラマティックな曲なのです。

それではまた別の記事で。
こまるほまるでした。