この曲が弾けると一気に「ピアノが弾ける人」って感じですよね。
一般の認知度も高く、大人気のこの曲ですが、そう簡単には弾けないんですよねー。
こんにちは、ピアノ歴30余年のこまるほまるです。
私もこの曲に何度となく取り組んでいます。
何と言ってもこの曲は、冒頭(5小節目)からいきなり難しいんですよね。
一番難しいと言って良いかもしれません。
右手と左手が違うリズムなので初めてだとめちゃくちゃ戸惑います。
この部分の攻略のカギは、正確にはどんなリズムになっているかを、スーパースローで理解することです。
おそらく多くの方が「フレーズ頭で帳尻が合っていればOKでしょ」という感じでなんとなく弾いているのではないでしょうか。私もそうでした。
しかし、理解するとしないとでは仕上がりが全然違ってきますので、
ちょっと根気よく取り組んでみませんか。
以下は、幻想即興曲を演奏する上で、難所をどう克服していくかを私自身の備忘録も兼ねて記したものになります。
【徹底解説!】ショパン 幻想即興曲 弾き方と難所攻略のポイント
まずはお手本動画をご覧ください。
ショパンコンクール覇者のユンディ・リ氏による、とても美しい演奏です。
5小節目 右と左でリズムが違う部分の音のタイミングを理解する
何と言ってもまずこの部分です。
一つの小節内に、右手の音符が16個、左手は12個あるのですが、
最も小さい単位(両手の音符がちょうど重なるまでのフレーズ)に分けると、
「右手の音符が4つなのに対して左手が3つ」という単位になります。
そしてそれらの音が発動するタイミングを正確に知るために、
4と3の最小公倍数である12に着目します。
メトロノームを使い、12回カチカチとカウントしてもらいながら、
右手は音符が4つですから、12÷4の解である3回に一度、音を出します。
左手は音符が3つですから、12÷3の解である4回に一度、音を出します。
(ここは図解が解りやすいので、近いうちに画像を用意しようと思います。)
気が遠くなりそうな作業ですが、こうやって拍が違う音の位置関係を身体が覚えてくれたらシメたものです。
こうしてゆっくりと頭で理解しながら落とし込む作業をすると、時間はかかるかもしれませんが仕上がりが断然違ってきます。
余裕がある方はぜひ取り組んでみてください。
5〜8小節 右手の16分音符のツブを揃える
まだ冒頭付近です。
ここが攻略出来たら曲の8割は完成したも同然ですので、頑張りましょう。
最終的には高速のパッセージとなる右手の16分音符ですが、
黒鍵と白鍵が入り混じり、弾きにくい箇所、弾きにくい指などの理由から、ひとつひとつの音のツブに強弱のムラが生じがちです。
そうなると滑らかに聴こえませんので、まずは音のツブを揃える練習をしていきましょう(表情をつけていくのはその後の段階です)。
音のツブを揃えるには、付点をつけたリズム練習が効果的というかお約束です。
その際、長く弾く音をハッキリと明確に弾き、短い音は軽く弾きます。
弾きにくい部分を見つけたら重点的に繰り返しましょう。
また付点をつけたリズム練習は、付点の位置を逆にした練習もセットで行います。(長く弾いた音を短く、短く弾いた音を長く弾くということです。)
でないと均等に指が強くなりません。
5小節目の右手の頭は休符になっているので、リズム練習時に、便宜上近場の音足して弾くとリズムが捉えやすくなりますよ。
ハノンを持っている方は、巻頭に記してあるリズム例を試してみるのもオススメです。
13〜24小節 親指もしくは小指に重みをかける
まずは右の4つの音符をセットで同時に和音として弾き、和声進行と指の位置を覚えましょう。
指が届かない方は親指のみを省いて弾いてみましょう。
そして13〜16小節目には、1指にアクセント が付いていますので親指に重みをかけて弾きます。
対して、17〜22小節は5指にアクセントが付きますので、重心を小指側に移動します。
この親指もしくは小指が重心となる部分は、それ以外の3つの音を押さえたまま、重心となる指を反復打鍵する練習が効果的です。
23小節以降はアクセントが無くなっていますが、ここはソフトペダルで音色を変化させてみましょう。
次の展開に続く良い演出になります。
30〜35小節 しだいにクレッシェンドで熱を帯びて
はいここ、興奮ポイントです。
我を忘れがちになるので、心の冷静さは保った上で盛り上げていきましょう。
左手のフレーズ単位の先頭の音を強調し、クレッシェンドをかけるとともに、だんだん早くすることで迫ってくる感じが出せます。
35、36小節 放物線をイメージして
半音階の急速な下降は、何かが落下するイメージでしょうか。
物体の落下は放物線を描くとされています。
放物線は最初の落ち具合は緩やかですが、だんだん加速度を増して最終的には勢い良く地面に叩きつけられます。
演奏も同様に、最後のソ#音を地面とイメージしてだんだん早く、クレッシェンドもかけてみてください。
特に、着地点であるソ#を含めた最後の5音を早く力強く弾くことで演奏効果が倍増します。
37小節〜 力強く自由に
ソ#の衝撃が周囲にも影響し、この部分はその余波を表現しているように思えます。
激しい中にもルバートをかけてテンポを少し揺らしてみるのもオススメです。
41小節〜 右手を歌わせて
転調し、明るく朗らかな雰囲気に一変します。
特に右手は余韻を持って歌いましょう。
特にフレーズ終わりの1音は大切に触れるように優しく弾きます。
伴奏も右手の歌に合わせますが、引っ張られすぎないように、Largoを保って右手よりも少し冷静に弾きましょう。
83小節目 再開は囁くように
まだ中間部の余韻が残る中、最初の主題が戻ってきます。
ここからはPrestoでとても早いパッセージですがごく弱く囁くように始めましょう。
119小節〜 ffとpの違いを明確に
曲の最終段階であるコーダは、感情の起伏が激しく、ffとpが入り乱れます。
この音量の違いを明確にしましょう。より劇的な雰囲気になります。
pの部分にもペダル記号付いていますが、ハーフペダルか、踏まなくても良いです。音の粒も短めに切るとffとのコントラストが強まります。
ここの右手も17〜22小節同様、弾きにくい部分です。
4音ずつを和音で弾いてメロディーの流れを確認する練習、
また、アクセントとなる小指以外の3つの音を押さえたまま、重心となる小指を反復打鍵する練習が効果的です。
129小節〜 幻想的に
左手で中間部のメロディーを回想するように奏でます。
その際の右手はppです。十分に音量を抑えます。
ペダルもしっかりと踏んで音の粒の境目を無くし、幻想的な雰囲気を演出しましょう。
参考動画
シプリアン・カツァリス氏の熱のこもった指導です。贅沢な!
音楽をどう捉えるかをすごく丁寧に教えていますよ。
さいごに
いかがでしたか。
この曲の難しさは、何と言っても冒頭5小節以降の右手と左手が違うリズムの部分に集約されています。
しかし、左右のリズムが違うからこそ、音と音の間隔が一定ではなくなり、この曲特有の魅力的な雰囲気を作り出しています。
是非とも根気よく取り組んであなたのレパートリーに加えてくださいね。
この記事があなたの練習の一助となれば幸いです。
それではまた別の記事で。
こまるほまるでした。