【徹底解説!】ベートーヴェン ピアノソナタ「悲愴」第二楽章 難所の練習方法

荘厳で鬱屈とした有名な主題を持つ第一楽章と、せつないメロディーが印象的な第三楽章の間で、それらとは対照的にほっとするような深い情感を湛え歌うこの第二楽章

ベートーヴェンが書いた最も美しいメロディーの一つです。
多くの映画・ドラマなどの作品で使用されているように、「悲愴」といえばこの曲というほどに有名ですね。

こんにちは、こまるほまるです。

この曲は簡単なようで、各声部を同時に歌わせるのが難しく、絶妙なバランス調整が必要とされます。

また、地味に指の拡張を求められる箇所もあったりで、手の小さい方にとってはかなり弾きにくく、演奏に工夫が必要な曲になります。

私は手をグッと開いて9度(ドから上のレまで)が辛うじて弾けるのでなんとか演奏できました。

以下は、このベートーヴェン ピアノソナタ「悲愴」第二楽章を演奏する上で、難所をどう克服していくかを私自身の備忘録として記したものになります。

ではみていきましょう。

【徹底解説】ベートーヴェン「悲愴」第二楽章 難所と練習のポイント

出だしのAdagio cantabile はゆっくりしすぎない

Adagio cantabileとは「ゆるやかに歌うように」という意味です。
大きなフレーズ(出だしから8小節の始めまでのひとまとまり)を感じて歌うように弾きましょう。

その際、テンポをどうするかを弾く前によく考えます。
「緩やかに」とあるのですが「歌うように」ですから、あまり音の余韻に浸るようでは、メロディーの繋がりが途切れてしまいます。

実際にメロディーを「ド〜シ〜ミ〜」と歌ってみたときに、違和感のないテンポを見つけ、あまりゆっくりすぎないように弾きはじめましょう

17小節〜 少し音色を変えて表情豊かに

これまでが回想であったとしたら、ここからはふとしたきっかけで我に返り、周囲の様子に目を向けるような感じでしょうか。

我に返る「きっかけ」となるものは人それぞれでしょうが、
涼やかに吹いてきた夏の風だったり、雲の間から垣間見えた光だったり。
自分なりにストーリーを作って弾いてみるのも面白いですね。

要するに、ここは単調にならないよう情景を思い浮かべながら表情豊かに弾くことが重要です。

23〜28小節目 ペダルは最小限に

メロディーが低い音域に移動していますので、ペダルにより音が濁りやすくボヤけた印象になりやすい箇所です。

ここは音の長さ分、きっちりと音を保持して弾きましょう。
ペダルなしでフレーズが繋がるように弾くには、24小節の右手上部のラ・ファを5・4で弱めに保持しつつ、2・1で下降のメロディーをなめらかに聴こえるように弾きます。

対して25小節からは右手5・4がメロディーラインに、27小節からは2・1にと、保持する側とメロディーラインが交互に変化します。

その流れを止めないよう緊張感を持って慎重に弾きましょう

37小節〜 自分なりの指使いを見つける

「何が始まるのだろう?」と思わせるような謎めいた雰囲気に一転します。

と同時に、右手はさらにメカニックな指の動きが要求されます。
この音形は久しぶりに弾くと指が攣りそうになります。

弾き方のポイントは、メロディーラインが担保できるよう、自分なりの指使いを工夫することです。

楽譜には音を押さえたままで4→5に指替えの指示がありますが、
私の場合は指替えせずに、乗り切りました。
また、38小節の右手内声部は、2つの黒鍵を親指で同時に打鍵しています。

さらに45小節〜の右手は非常に弾きにくい音形ですので、ご自分にあった指遣いを見つけましょう。
私は右手上部のメロディーラインを3→5→3→4→3→5と弾き、46小節の右内声のシ・ラを親指のみの同時打鍵で弾いています。

51小節〜 内声部はメロディーに沿って流れるように

要するに内声の3連符を「1・2・3」とカウントしないことです。
一気に単調で眠い演奏になってしまいます。

あくまでも主役はメロディーラインです。
その起伏に沿って、演出効果的な位置付けの3連符が悪目立ちしないように弾きましょう。

70小節〜 rf はだんだん小さく

曲のラストの部分にある、rf(リンフォルツァンド)とは、「いきなり強く」という意味ですが、ここでは流れ上ラストのppに向かって、その強さ具合もだんだんと収束させて弾くと自然です。

その際、3回似た音形が繰り返されますから、1、2回目は少し茶目っ気を出す感じで可愛らしくサラッと弾き、3回目に少しゆっくり目に弾き(ritをかけて)静かに終わるという弾き方がくどくなくて私は好きです。

まとめ

いかがでしたか。

この曲は難易度的には易しいとされていますが、単調にさせない表現の模索や、指づかいの工夫、ペダルに頼りすぎることなく滑らかに演奏する技術の習得など、聴いているだけでは解らない難しさが散りばめられています。

そういった意味では、想像力・集中力を必要とする大人のための曲だと思っています。

ぜひ「悲愴」第二楽章をマスターし、この美しいメロディをキレイに歌える演奏を目指してください。

この記事があなたの練習の一助となれば幸いです。

それではまた別の記事で。
こまるほまるでした。